ChatGPTはどこまで覚えている?短期と長期記憶の完全ガイド

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「ChatGPTと話していると、前の会話を覚えていて賢いなと思う時もあれば、さっき言ったばかりなのに、きれいに忘れられてしまう…」

このように、ChatGPTの「記憶」に関して、物覚えが良かったり、忘れっぽかったりという一見矛盾した振る舞いに疑問を感じていませんか?

結論から言うと、その現象の裏には、ChatGPTが人間のように2種類の「記憶」を使い分けているという事実があります。

本記事では、ChatGPTの記憶の「短期」と「長期」という二重構造、短期記憶が忘れる仕組み、そしてChatGPTの記憶を安全に管理し、完全に削除するための重要なステップまで掘り下げていきます。

この記事を読めば、ChatGPTの忘れっぽさと物覚えの良さの謎が解け、ChatGPTをより賢く安全に使いこなせるようになるでしょう。

記事のポイント

  • ChatGPTの記憶は「短期記憶」と「長期記憶」の二重構造

  • 短期記憶は「作業机」に例えられ、会話が長くなると古い情報から忘れる

  • 長期記憶は「専用ノート」で、ユーザーの事実と傾向を記録

  • 記憶の完全削除には「メモリ」と「チャット」削除の2ステップが必須

ChatGPTはどこまで覚えている?短期記憶の仕組み

ホログラムの脳の画像

ChatGPTが会話の流れを自然に保てるのは、この「短期記憶(コンテキストウィンドウ)」のおかげです。これは、その会話セッション中だけ有効な一時的な記憶領域(ワーキングメモリ)です。

  • 作業机の上のメモという比喩
  • 記憶の単位「トークン」と文字数の関係
  • 【机の限界】なぜ「覚えてない」が起こるのか
  • モデルごとの容量比較

ここでは、その仕組みと限界について詳しく見ていきましょう。

「作業机の上のメモ」という比喩

技術的には、これは特定の名前を持つ機能ではなく、ChatGPTが会話の文脈を維持するための仕組みそのものを指します。

これを「一時的な作業机」に例えてみましょう。

ChatGPTと会話を始めると、新しい作業机が用意されます。会話が進むにつれて、ユーザーの発言やChatGPTの応答が「メモ」として机の上に置かれていきます。

ChatGPTは次の発言を考えるとき、常にこの机の上にあるメモ(=過去のやり取り)全体を参照して、文脈に合った応答を生成するのです。

重要なのは、この机は会話セッションが終わると綺麗に片付けられてしまうということです。

別の日に新しいチャットを始めると、そこにはまっさらな新しい机が用意され、前の会話のメモは残っていません。これが「忘れっぽい」と感じる主な原因です。

記憶の単位「トークン」と文字数の関係

この「作業机」の広さ、すなわち短期記憶の容量は、文字数ではなく「トークン」という単位で測定されます。

トークンとは、AIがテキストを処理する際の最小単位です。AIは私たちが使う言葉を、意味のある最小単位に分割(トークン化)して処理します。

  • 英語:1トークン ≒ 約4文字
  • 日本語:1トークン ≒ ひらがな1文字、または漢字1~2文字

たとえば、コンテキストウィンドウが128,000トークンなら、日本語なら約8万~10万文字前後の情報を一度に処理できるということです。

【机の限界】なぜ「覚えてない」が起こるのか

ChatGPTが「さっきの話を覚えてない」現象は、このコンテキストウィンドウ(作業机)の限界が原因です。

会話が非常に長くなると、机の上がメモでいっぱいになります。新しいメモを置くためには、最も古いメモから机の外に押し出されてしまうのです。

つまり、会話の冒頭で指示した重要な前提条件や定義なども、チャットが極端に長くなるとAIのメモリ(短期記憶)から消え去ってしまいます。

その結果、AIは文脈を無視した回答や、以前と矛盾した回答を返し始めるのです。

モデルごとの容量比較

この「作業机の広さ」は、AIのモデルによって天と地ほどの差があります。大容量であるほど、AIが一度に大量の資料を読み込み、専門家のように分析・要約する能力の向上に直結しています。

以下の表に、主なモデルの容量をまとめました。

参照:OpenAI 公式ヘルプ
モデル最大コンテキストウィンドウ
GPT-5.1
GPT-5.1 Thinking
非公開-
GPT-5 Thinking196,000トークン約500ページ:複雑なタスク、思考時間調整
GPT-516,000〜128,000トークン
※プランによって異なる
約40〜300ページ:軽い推論〜標準的な大容量
GPT-4o 128,000トークン約300ページ:標準的な大容量

2025年11月12日に「GPT-5.1」がリリースされましたが、今のところトークン数は不明です。また、以前のGPT-5やGPT-4oなどはレガシー(旧)モデルとなっています。

ChatGPTはどこまで覚えている?長期記憶の仕組み

2つの知能が向かい合っている画像

短期記憶とは別に、ChatGPTには会話をまたいで情報を記憶する「長期記憶(メモリ機能)」機能が搭載されています。

これはモデル本体の機能ではなく、ChatGPTというアプリケーションが提供する、「自分専用ノート」に相当する機能です。

  • 長期記憶の二層構造:「事実」と「傾向」
  • 「カスタム指示」と「トーン調整」
  • プランによる長期記憶機能の違い

ここでは、その二層構造と関連機能について解説します。

長期記憶の二層構造:「事実」と「傾向」

ChatGPTの長期記憶は、性質の異なる2つの要素から成り立っています。

Saved Memories(保存された記憶)

  • 概要:「これを覚えておいて」と明確に指示した事実や、ChatGPTが「重要」と判断して自動で保存した特定の情報
  • 比喩:自分専用ノートに、太字で重要な事実を書き込むようなもの
  • 例:「私はベジタリアンです」「会議の議事録は特定の形式でまとめて」
  • 性質:ユーザーが削除するまで永続的に保持
  •  

チャット履歴の参照

  • 概要:これまでの全ての会話履歴の中から、あなたの好みや傾向をChatGPTが要約して把握
  • 比喩:ノート全体を読み返し、「この人は丁寧な言葉遣いが好きだな」「テクノロジーの話題に興味があるな」といった全体的な洞察を得るイメージ
  • 性質:個別に管理することはできず、時間の経過とともにより有用な情報に更新・変化
  •  

この2つが連携することで、ChatGPTはユーザーをより深く理解し、パーソナライズされた応答を返せるようになります。

「カスタム指示」と「トーン調整」

長期記憶機能と密接に関連し、応答の一貫性を保つための強力な機能が「カスタム指示」と「トーン調整」です。

カスタム指示 (カスタムインストラクション)

これは、全ての会話に適用される基本的なルールや自己紹介などを書き込んでおく場所で、例えるなら「ノートの表紙の裏に書く注意書き」のようなものです。

記憶機能が会話の中から文脈を学習していくのに対し、カスタム指示は常に守ってほしい不変のルール※を設定するのに最適で、両者は互いに補完し合います。
※例:「私は高校で物理を学んでいます」「専門用語は使わず中学生にも分かるように説明して」

トーン調整

ChatGPTの「口調」を選ぶこともできます。レポート作成の時は「プロフェッショナル」、アイデア出しの時は「フレンドリー」 といったように、場面に合わせて最適なトーンを選べます。

1つ1つ指示するのが面倒臭ければ、「パーソナライズ」機能で固定することもできます。

ChatGPTのパーソナライズ機能で「基本的なスタイルとトーン」で口調を選択している画像

プランによる長期記憶機能の違い

長期記憶機能は、利用するプランによって提供される機能の深さが異なります。

以下の表に、2025年11月15日時点のChatGPTの料金プランと、長期記憶の特徴をまとめました。

参照:ChatGPT 料金
プラン月額料金(税込)※年払い長期記憶の主な特徴
Free無料・「Saved Memories」を中心としたライトウェイト版の記憶機能を提供
・最近の会話履歴を参照し応答をパーソナライズ
Plus20ドル(約3,000円)・最も高度な記憶システムを利用可能
・重要な情報を自動で優先する自動メモリ管理
・保存した記憶の検索、並べ替え、過去バージョンへの復元機能など
Pro200ドル(約30,000円)Plusと同様

このように、プランによって利用できるメモリ機能の深さや詳細が異なります。ご自身の利用目的に合わせてプランを選択することをおすすめします。

ChatGPTはどこまで覚えている?記憶の管理と最新の応用機能

小さいロボットが「?」乗っている天秤を見ている画像

記憶機能は便利ですが、プライバシーの管理も重要です。

  •  記憶機能のON/OFFと「一時チャット」
  • 【最重要】情報を完全に消すための2ステップ
  • データとモデル学習の制御
  • グループチャットと共有プロジェクト
  • 学習をサポートする「学習モード」
  • 非同期リサーチ「ChatGPT Pulse」

ここでは、AIの記憶をユーザー自身が管理・制御する方法と、記憶機能を活用した最新の応用機能について解説します。

記憶機能のON/OFFと「一時チャット」

記憶を管理するための主要な方法は3つあります。

1. メモリ機能の無効化

「パーソナライズ > メモリ > 保存されたメモリを参照する」から、メモリ機能全体をいつでもオフにできます。

ChatGPTのパーソナライズ機能で「メモリ」をオフにしている画像

オフにしている間は、新しいメモリが作られることも過去のメモリが使われることもありません。

2. 個別のメモリ削除

会話の途中で「さっきの〇〇のことは忘れて」と指示することで、特定のメモリを消すことができます。

また、「パーソナライズ > メモリ > 管理する > 保存されたメモリ」から保存されているメモリの一覧を確認し、不要なものを手動で削除することも可能です。

ChatGPTのパーソナライズ機能で「保存されたメモリ」の画像

3. 一時チャットの利用

一時的にメモリを使わず会話履歴にも残したくない場合は、「一時チャット」が非常に便利です。ブラウザのシークレットモードのようなもので、その場限りの会話ができます。

ChatGPT一時チャットをオンにする画像

一時チャットは既存のメモリを使わず、新しいメモリも作らず、履歴にも残らないためモデルの学習にも利用されません。

【最重要】情報を完全に消すための2ステップ

ここで、多くの人が見落としがちな非常に重要な注意点があります。それは、チャットを削除しただけではその会話から生まれた「Saved Memories(保存された記憶)」は消えないという事実です。

なぜなら、Saved Memoriesはチャット履歴とは独立した、ユーザーの永続的なプロフィール情報の一部として保存されているためです。

個人情報や機密情報をChatGPTから完全に削除したい場合は、以下の2ステップを実行する必要があります。

step
1
長期記憶から記述を削除

先述した方法ですが、ChatGPTの「パーソナライズ > メモリ > 管理する >保存されたメモリ」を開き、該当するメモリを見つけて手動で削除します。

ChatGPTのパーソナライズ機能で「保存されたメモリ」の画像

step
2
元の会話ログ(チャット履歴)を削除

次に、その情報が記録された元の会話のチャットルーム自体を削除します。

この2段階の操作によって、初めて情報がユーザーの管理下から完全に削除されることを覚えておきましょう。
※モデルの学習データに残る可能性とは別

データとモデル学習の制御

Saved Memoriesを含む会話コンテンツは、モデルの学習設定がオンの場合モデルの改善に使用される可能性があります。

この設定は、「設定 > データコントロール > すべての人のためにモデルを改善する」からいつでもオフにできます。

ChatGPTの「データコントロール」から「すべての人のためにモデル改善する」をオフにしている画像

なお、ChatGPT Business、Enterprise、Eduプランのコンテンツは、デフォルトでトレーニングに使用されません。

グループチャットと共有プロジェクト

ChatGPTは一人で使うだけでなく、複数人で共同作業するための機能が強化されています。

グループチャット

複数人のチャットルームにChatGPTを招待できます。旅行の計画や意思決定など、短期的な相談に最適

共有プロジェクト

チャット、ファイル、指示書などを一つの「ワークスペース」にまとめて管理できる機能。長期的なレポート作成や共同作業に向く

また、ChatGPTのプロジェクト機能には、作業空間の「記憶」を独立させる強力な仕組みがあります。

プロジェクト固有の指示

プロジェクトごとにカスタム指示を設定でき、アカウント全体のカスタム指示よりも優先される(上書き)

プロジェクト専用メモリ

プロジェクト作成時に「プロジェクト専用メモリ」を有効にすると、そのプロジェクト内の会話とファイルのみをコンテキスト(短期記憶)として参照。これにより、外部の長期記憶や他のチャット履歴が混ざるのを防ぎ、機密性の高い作業のために自己完結した空間を作り出せる

学習をサポートする「学習モード」

「Study Mode(学習モード)」は、ChatGPTを家庭教師のように変える機能です。

いきなり答えを提示するのではなく、ソクラテス式の対話を通じて、ユーザーの理解度を確認しながら一歩ずつゴールへと導いてくれます。

これは、AIがユーザーの学習進捗という「文脈(記憶)」を保持しながら対話する高度な応用例です。
※2025年11月15日現在、無料ユーザー(ブラウザ版)は利用不可

非同期リサーチ「ChatGPT Pulse」

2025年9月25日、ChatGPT Proプランユーザー向けに「ChatGPT Pulse(パルス)」が提供されました。

ChatGPT Pulseは、ユーザーが寝ている間にChatGPTがユーザーの過去の会話履歴やメモリ、興味関心に基づいて自動でリサーチを行い、翌朝に最新情報のまとめてくれる機能です。

AIの記憶活用の未来を感じさせ、ユーザーのメモリを元に能動的に動作する一例です。

まとめ:ChatGPTはどこまで覚えている?賢く安全に使いこなすために

この記事のポイントをまとめます。

  • ChatGPTの記憶の二重構造
  • 短期記憶は一時的な「作業机」
  • 短期記憶の容量超過による忘却
  • 長期記憶は永続的な「専用ノート」
  • 長期記憶の2種類「事実」と「傾向」
  • カスタム指示による不変ルールの設定
  • ユーザーによる記憶データの完全な制御
  • 一時チャットによる履歴・記憶の無効化
  • 記憶の完全削除に必要な2ステップ
  • プロジェクト機能の独立した専用メモリ
  • PulseによるAIからの能動的な情報提案

ChatGPTの記憶の仕組みを理解することは、ChatGPTとの対話をより生産的にし、プライバシーを守りながらAIを安全に使いこなすための鍵となります。

ぜひこの知識を活用して、ChatGPTをあなただけの最高の相棒に育てていってください。

 
 

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